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2.2.5その他の留意点
以上、地域防災計画の「総則」、「災害予防計画」、「災害応急対策計画」、「災害復旧計画」別に、地域防災計画の主要問題点をみてきた。そこで指摘した以外にも、災害弱者、メンタルケア、災害廃棄物等々、重要と思われるテーマが数多くあるが、別の機会に譲りたいと思う。
ところで、今回取り上げた問題点を解決すれば、地域防災計画は大幅に改善されると思われるが、その改善作業をより円滑に進めるには、以下の点に留意することが大切である。
(1)地域防災計画を名実ともに地域防災行政の基本文書として位置づける
 2.2.2の災害予防計画のところでも述べたように、地域防災計画が名前だけのものになっているところが少なからずある。これを実質においても地域防災行政の基本文書として位置づける必要がある。
そのためには、まず、首長が危機管理意識をしっかり持つことが必要である。新「防災基本計画」においても、「防災とは、災害が発生しやすい自然条件下にあって、欄密な人口、高度化した土地利用、増加する危険物等の社会的条件をあわせもつ我が国の、国土並びに国民の生命、身体及び財産を災害から保護する、行政上最も重要な施策である」とうたわれている。しかしながら、阪神・淡路大震災前においては、多くの首長の危機管理意識は災害国日本の地方公共団体のトップにふさわしいものとは決していえない状況であった。首長のその危機管理意識の低さが、現場の防災担当者の意欲を削ぎ、防災対策の実施を阻害するという事例は多数存在していた。このような状況が現在もあるならば、即刻改める必要がある。
また、阪神・淡路大震災は、大規模災害には地方公共団体の総力で対応しなければならない(それだけでも不十分)ことを大規模な形で証明した。それ以前は、防災対策は防災主管課と一部の課の仕事であるとの誤った認識が地方公共団体の中に広く存在していた。このような当事者意識を欠如した課や職員の存在が、前述の首長の例と同じく、防災担当者の意欲を大いに剛いでいた事実があるが、全職員を対象とした防災研修などにより早急に改善するべきである。
次に、地域防災計画を実質的なものにするための仕組みを設ける必要がある。たとえば、企画担当課は、各課の施策・事業を地域防災計画をもとにチェックし、それにふさわしくないものは原課に再考を促す。また、財政担当課は、企画担当課のチェックを受けたものに優先的に予算を配分するといったものである。都道府県や市町村の総合計画に似た運用方法を考えてみたらどうかということである。
さらに、このような仕組みを担保するために、防災会議にもっとチェック機能を持たせることが必要である。シャンシャンで終わる防災会議ではなく、地域防災計画の内容や地域防災行政の進捗状況を厳しくチェックする機能が必要である。
防災会議をそのようなものとするには、たとえば、各課や各防災関係機関に、過去1年間の施策・事業の実施に際して当該地域の防災性能の向上にどのように配慮したか、防災施策はどこまで進捗したか、その結果防災水準はどのレベルに到達したかを報告させ、同時に、今後1年間の目標を明示させるということも考えられる。また、大規模災害には行政機関だけでは対応できない事実を踏まえ、自主防災組織、ボランティア、物資の輸送・調達を担う関係機関等々、当該地域の重要な防災力を構成する団体、機関の代表も防災会議のメンバーに加えることにより、防災会議の議論を活性化することも考えられる。これにより、それぞれの団体・機関の役割意識の大幅な向上も期待できる。

 

 

 

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